白き衣を纏う神の化身を降臨させてみた。 ~創造主物語①~
私の友人に「創造主」と呼ばれる男がいた。
無から有を、生命をもつくりだす。
それが彼の想像主たるゆえんだ。
もうかれこれ15年以上前になるが、私は彼と同棲していた時期があった。
彼は無精者で、テレビに出るようなゴミ屋敷の域には達していないものの、家の中は荒れ放題。
私も多くの物に囲まれると安心するタイプであったため、それを悪しとしなかった。
独り暮らしをしているときに訪れる「自炊ブーム」。
彼はときおり自炊に目覚め、おいしい食事を振る舞ってくれた。
しかし、それがあのおぞましき事件を引き起こすことになるとは・・・
自炊ブームが数ヶ月過ぎ去ったある日、ふとキッチンのコンロ上にずっと置いてある鍋が気になった。
私 「あの鍋なにか入ってるの?」
創造主「触れてはなりません 天罰が下ります」
私 「玉手箱じゃないんだから」
私はそう言って恐る恐る蓋を開けた
「ふンぐォォォお!!!!」
声にならない声を上げる私と彼。
猛烈な異臭とともに見えたのは、真っ白い、人知を超えた何かだった。
身の危険を感じ、震える手で蓋を閉じるも、既に家じゅうが汚染され、わたしたちは屋外に避難するほかなかった。
「少し肺に入った・・・」
彼が言った。
冗談ではなく、あの空気を吸っていたら5分ともたない
私 「そのもの、白き衣をまといて金色の鍋に降り立つべし。言い伝えの通りじゃ。」
我々は神の化身である白き物体を召喚してしまった。
私「また村が一つ死んだ。 行こう、ここもじき腐海に沈む。」
我々はひとまず友人の家に避難し、ほとぼりが冷めた頃におそるおそる家に戻った。
そして、残り香で気を失いそうになりながらも白神様を封印し、丁重に祀った。
「腐海とともに生き、腐海とともに死ぬ。それでいいじゃないか。」
彼はそう言った。
、
その後、その鍋は二度と蓋を開けられることなく、そのまま鍋ごと廃棄されたことは言うまでもない。