家の中でカマキリを孵化させてみた。 ~創造主物語③~
私の友人に「創造主」と呼ばれる男がいた。
無から有を、生命をもつくりだす。
それが彼の想像主たるゆえんだ。
12月のある日、私は彼の家のそばでカマキリの卵をみつけた。
「へー ここからカマキリが生まれるんですか。初めて見ました。」
彼は興味深そうにそれに見入っていた。
ひとしきり観察が終わると、彼は言った。
「いいものを見せてもらいました。外に返してきてくださいね。」
私は窓際に卵を置いてトイレに行ったきり、その言葉がすっかり頭から消えていた。
そして翌年、5月のある日、事件は起きた。
彼が時期外れのコタツの上で何かを見つけた
彼「先輩、これなんでしょうか?」
私「ああ、カマキリの赤ちゃんだね。こんなものどこから入ってきたんだろう?」
その刹那、背筋を冷たい汗がつたった。
窓のところのカマキリの卵、そのままだった・・・
「ちょっと花摘んでくるわ。」
そう言っておもむろにリビングからキッチンへ。
窓際を見ると、いるわいるわ。
無数のカマキリ
すこしずつ生まれてこればいいものを・・・
どうしてお前ら一気に出てきた!
これじゃどんな名産婦人科医の手にも負えんぞ。
私の不穏な動きを察知したのか、彼もやってきた。
「なんですかこれは!」
「うむ、元気な赤ちゃんだ」
「大きくなれば、蚊やハエを食べてくれるぞ」
飼育を提案したが、0.5秒で拒否された。
今でこそ香川照之氏のカマキリ先生人気で、カマキリに対しての印象も良くなってきたと思うが、当時は嫌いな昆虫ワースト10の常連だった。
「どうしてもイヤならば殺すがいい。さあ殺せ。いつもやっていることだろう?」
そういって近くのハエたたきを渡した
「先輩、できません・・・」
「くだらん感傷だな 貸してみろ」
が、、、、、できない!!
ハエならば無慈悲に叩き殺すのに、カマキリの赤ちゃんにはそれができない。
なぜかは説明ができないが、我が子のようにちょろちょろと動き回る無邪気さ。
そして、小さいながらも形はしっかりと死んだ親の形を真似ており、その小さなカマでも戦おうとする勇敢さ。
そんなところがいじらしい。
仕方ないので、私たちは空きビンに1匹ずつカマキリを入れ外へと放った。
元気に育って、また帰ってくることを祈って。